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導入事例

2019/07/03

[導入事例] 京都大学 後藤仁志研究室様

高解像度粒子法シミュレーション用サーバシステムを導入いただきました。

研究内容

 京都大学工学研究科 都市基盤設計学講座沿岸都市設計学分野 後藤仁志研究室
 五十里洋行助教にお話を伺いしました。

 

 

研究室・研究内容のご紹介 

 京都大学工学研究科 都市基盤設計学講座沿岸都市設計学分野様は、粒子法によるシミュレーション工学の多元的展開、砕波・激流の水理から群衆行動まで幅広く研究をされています。今回導入されたシステムは、以前よりご利用されていた津波・高潮被害予測モデル開発に関する研究での計算環境を一新し、広範囲かつ高解像度の粒子法シミュレーションや固気液相の相互作用を含む複雑な波浪計算も行うことができます。

 HPC テックでは導入後直ぐにご利用いただけるよう OS やコンパイラ、ジュブスケジューラ等のインストールをさせていただき、サーバルームへの設置作業もさせていただきました。

 

断面二次元造波水路

 

 

研究テーマ

 複雑かつ多様な水面の挙動を追跡可能な粒子法型流体解析および水底における流砂・漂砂の動態を予測するための数値移動床(数値流砂水理学)を軸とした計算力学的な基礎研究を行っています。自然現象から人間行動まで広範囲の諸現象を粒子システムとして表現するシミュレーション工学的アプローチが特徴です。

 

 

 

開発研究紹介

▶ 『粒子法による自由表面流の計算力学』:砕波・激流のシミュレーション

 狭義の「粒子法」は Navier-Stokes 式のグリッドレスソルバーを意味します。この種の粒子法としては、SPH 法と MPS 法が広く用いられています。計算格子上の固定計算点を用いる Euler 的な方法では、水塊の分裂や再合体を伴う複雑な水面の挙動を追跡するのは容易ではありません。粒子法は、相互作用しながら移動する粒子が計算点として機能する Lagrange 的な方法であり、Navier-Stokes 式の各項は粒子間相互作用として離散化されます。そのため、単純なアルゴリズムで複雑な水面の挙動にも柔軟に対応することが可能です。 当講座では、波力、越波量等の海岸構造物の設計情報の効率的な収集のため、3次元波浪場のシミュレーションツールとして、粒子法に基づく数値波動水槽を開発しています。100万オーダーの粒子の追跡を可能とする並列計算や Boussinesq モデルに代表される水深積分型モデルとの境界接合などの技術開発を行っています。 洪水時の都市内地下空間からの避難では、階段が唯一の避難ルートです。避難者が流入水に抵抗して登段できる限界状態を正確に推定するには、階段上流れの物理特性の把握が不可欠です。激流ゆえに計測器の設置が困難なこの種の流れについて計算力学的にアプローチしています。図-1 は計算結果の一例です。 図-2 は、漂流木を伴う津波氾濫流が桁橋に衝突する瞬間をシミュレーションした例です。多数の浮遊物の衝突を伴う流れの計算は、従来の流体解析手法では対応が困難であった課題で、粒子法の有効性が顕著に現れる例の一つです。

 

図-1 階段上流れ

 

図-2 漂流木を伴う津波氾濫流と桁橋の衝突

 

▶ 『数値流砂水理学』:移動床現象への混相流・粒状体力学の導入

 河川・海岸の流れは、底面境界が土砂で構成された移動床流れであり、河川・海岸の水理現象の理解には、移動床の水理学が不可欠です。当講座では、この種の問題に計算力学的視点からアプローチするために、混相流(固相・土砂と液相・水流の混在した流れ)と粒状体(砂粒の集合体)の力学を基礎とした数理モデルの開発とそれに基づく流砂・漂砂現象のシミュレーションを行っています。この種の研究領域は、「数値流砂水理学」と呼ばれ、その基幹ツールである数値シミュレータは「数値移動床」と呼ばれています。

 

▶ 『粒子モデルによる群衆避難の計算科学』:災害時避難計画の策定支援ツール

 水害時の群衆避難のシミュレーションは避難計画策定の有力なツールです。特に、個体ベースモデルは、現実の群衆避難の素過程である個人行動を直接扱うので、避難過程のディテールの再現に最適です。 図-3 は、津波来襲時の小市街地から背後の高台への群衆避難のシミュレーションの一例です。個体ベースモデルでは、避難者個人を追跡するので、種々の属性を個体に付与することが可能で、避難経路情報の周知の有無など、様々な避難シナリオに基づくシミュレーションが実施できます。 当講座では、各種避難計画の策定など実用面の応用研究についても学外機関との共同研究を進めています。現時点の計算規模は数万人に制限されていますが、仮想都市(Virtual City)での社会実験のツールとしての発展を志向しています。

 

図-3 津波来襲時の小市街地から高台への群衆避難

 

▶ 『粒子モデルによる群衆避難の計算科学』:災害時避難計画の策定支援ツール

 地盤を弾塑性体として連続体近似して扱い、地盤内部の応力状態や変形挙動を予測する手法は従来より有限要素法等を用いて行われておりますが、当研究室では粒子法を適用することにより微小変形だけでなく大変形をも予測可能な土砂変形モデルの開発を行っています。また、Lagrange 的に計算点を追跡する粒子法の特性を生かし、流れにより巻き上がった孤立土砂粒子を浮遊砂のソースとして浮遊砂の輸送方程式を同時に解くことにより、洗掘 → 拡散 → 堆積 の土砂移動サイクルを精度良く解くモデルを開発しています。
 図-4 は全開式土運船より投下された土砂の拡散シミュレーションの一例です。計算開始時には土運船内で連続体(弾塑性体)の一部であった土砂粒子が開扉とともに水中に落下し、浮遊砂へと変質しながら両側に拡散していく様子が再現されています。底面に堆積した後は再び弾塑性体へと戻ります。
 図-5 は大規模津波の越流により混成防波堤が崩壊する過程のシミュレーション結果です。越流水によりケーソン背後の地盤が徐々に洗掘されケーソンが支持できなくなり、洗掘孔に向かってケーソンが滑落していきます。この計算では砂地盤と捨石マウンドを弾塑性体として扱っており、下図のような応力分布を得ることが可能です。

 

図-4 全開式土運船による投下土砂の拡散・堆積

 

図-5 混成防波堤の越流洗掘型被災過程のシミュレーション

 

 

 

   京都大学 後藤仁志研究室 ホームページ

   http://particle.kuciv.kyoto-u.ac.jp/

 

 

清水裕真さま(博士課程)  五十里洋行先生  藤原聖史さま(修士課程)

 

 

導入システム

Dummy Image

HPCT R115s x1
 CPU:Intel Xeon Gold (3.2GHz, 8Core) x1
 Memory:DDR4-2666 48GB
 HDD:1TB x3 RAID1 (1TB)
 Infiniband:FDR (56Gb/s)
 Intel Parallel Studio XE 2019

HPCT S12b x1
 CPU:Intel Xeon Gold (3.6GHz, 4Core) x1
 Memory:DDR4-2666 48GB
 SSD:1.9TB x1
 HDD:10TB x12 RAID6 (80TB)
 Infiniband:FDR (56Gb/s)

HPCT R225s x4
 CPU:Intel Xeon Gold (3.2GHz, 8Core) x2
 Memory:DDR4-2666 96GB
 SSD:1.9TB x1
 Infiniband:FDR (56Gb/s)

HPCT R425gs x1
 CPU:Intel Xeon Gold (3.2GHz, 8Core) x2
 Memory:DDR4-2666 192GB
 SSD:1.9TB x1
 GPGPU:NVIDIA Tesla V100-PCIe x2
 Infiniband:FDR (56Gb/s)
 NVIDIA Driver, NVIDIA CUDA Toolkit

UPS, 42U Server Rack

 

 

導入後の感想お聞かせください

 今まで使用していた環境では非常に時間がかかっていた計算を数台の計算サーバや GPU サーバを導入したことにより、短時間で完了する事ができより精度の高いシミュレーション結果を得ることができるようになりました。また構成やこまかな設置の相談に関しても HPC テックさんが親身になっていただき、安心して導入することができました。
 導入した本格運用はこれからですが、この計算機環境を最大限活用し今後の研究をさらに進めると同時に計算機環境も大規模に増設できたらと考えています。

 

 

 

 

最後に

五十里先生、そして撮影にご協力をいただきました研究室の皆様、ご多忙な中、貴重なお時間を頂き
ありがとうございました。
これからも研究活動に少しでもお役にたてる様、弊社も微力ながらお手伝いをさせていただきます。

 

 

 

 

 

弊社では、科学技術計算や解析などの各種アプリケーションについて動作検証を行い、
すべてのセットアップをおこなっております。

お客様が必要とされる環境にあわせた最適なシステム構成をご提案いたします。

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