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導入事例

2020/09/29

[導入事例] 名古屋大学 理論・計算化学研究室様

EPYC 搭載 メニーコア計算機 HPCT WR27as を導入頂きました。

研究内容

 名古屋大学 理論・計算化学研究室 藤本和士助教にお話を伺いました。

 

 

研究室のご紹介 

 名古屋大学 理論・計算科学研究室様では、分子動力学(MD)計算に基づき分子集合系の大規模計算を実施し、構造形成や変性などの分子集合体の機能・現象の研究を行なっております。

 シミュレーション技術を開発し、理論的な現象解明に加え、材料設計などにも役立てることを目指されております。

 

 

研究テーマ

 分子シミュレーション(主に全原子分子動力学シミュレーション)の対象は、界面活性剤、タンパク質の圧力変性のモデル研究、複雑液体、ポリマー系、コロイド系、溶媒中の包摂化合物系など現在では広範囲に扱われております。特に最近は全原子 MD 計算による、高分子材料の研究を精力的に行なっております。

 

 

研究内容のご紹介

▶ 高分子材料の衝撃破壊

 様々なところで利用されている高分子であるが、高分子のタフネスを知ることは重要な課題です。特に、年々様々なデバイスのサイズが薄くなっているため、必然それに使用する高分子材料も薄くなってきます。高分子材料が薄くなるほど、分子性が重要となってきます。

 高分子は、その種類によって破壊様式(脆性・延性)が異なります。脆性・延性の違いを分子レベルで解明するために、全原子分子動力学(AA-MD)計算による高分子破壊シミュレーションを実施しました。ターゲットとして用いた高分子材料は、代表的な脆性材料であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)と、延性材料であるポリカーボネート(PC)です。図に AA-MD 計算より得られた応力歪曲線を示します。PMMA は最大応力を超えると、応力は小さいままでした。これは、最大応力後大きな void が形成され、割れてしまったからです。つまり、PMMA の系は脆性破壊を示しました。一方で、PC は降伏点を超えたのち⼀旦応力が下がり(歪軟化)、再び応力が大きくなりました(歪硬化)。これは、延性破壊の特徴であります。また、PC には小さな void が生成消滅を繰り返し、大きな void には育たなかったことが脆性破壊にならなかった原因です。更なる詳細な解析の結果、分子のかとう性(二面角の動きやすさ)、からみ合い密度、不均⼀性がこれらの差を生み出していることも突き止めました。

 

 

 

▶ DDS キャリア / 脂質ナノ粒子 分子シミュレーション

 様々な脂質組成(非イオン性、カチオン性、アニオン性、双極性)からなる小胞の構造や物性の理解に焦点を当て研究を行っております。分子動力学シミュレーションによるベシクルの研究には、粗視化(CG)モデルが不可欠であり、種々の脂質分子モデルの開発を進られております。そのうえで、膜物性解析、小胞形成のメカニズム、小胞間の相互作用、膜融合、小胞形態変化などを自由エネルギー解析を駆使して、研究に取り組まれております。

 

 

 

▶ ウイルスカプシド / ウイルス粒子のモデリング 分子シミュレーション

 ウイルスカプシドの薬剤との相互作用、特に B型肝炎ウイルス(HBV)への薬剤吸着、薬剤によるカプシドの安定化・不安定化に関するシミュレーション技術を開発されております。

 B型肝炎ウイルス粒子(ビリオン)はエンベロープで囲まれており、エンベロープは 3種の膜タンパク(L, M, S)と脂質からなる膜構造を持っています。そのモデリングを行い、ビリオンが細胞に取り込まれる過程(エンド・サイトーシス)を粗視化分子動力学シミュレーションで解明することを目指されております。

 

 

 

▶ 電池:電解質系 分子動力学シミュレーション

 プロトン伝導機構や燃料ガスの漏れ(膜中拡散)に対するPFSA構造の影響を分子動力学(MD)シミュレーションを用いて研究を行われております。

 長時間の分子動力学シミュレーションによって、イオンの動的性質の特性評価に取り組まれております。

 

 

 

▶ マルチスケールモデリング

 全原子 MD では解析不能な空間時間スケールの検討を分子レベルで行うため、粗視化モデルの開発を続けられております。

 

 

 

 

 

   名古屋大学 理論・計算科学研究室 ホームページ

   http://www.chembio.nagoya-u.ac.jp/labhp/physchem1/index-j.html

 

 

導入システム

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HPCT WR27as

CPU : AMD EPYC 7552 48Core 2.2GHz x2
RAM : DDR4-3200 256GB
Storage : SSD 480GB SATA 6Gbps x1
OS : CentOS

 

 

 

 

 

 

 

 

導入システムの狙いや目的を教えてください

 解析用計算機を新設しようと考えた際、HPCテックさんより AMD EPYC 搭載の計算機の紹介があり検討をし始めました。コア数が多いということが非常に魅力に思い、48コアの CPU が 2基搭載されている計算機を選定いたしました。

 

 

 

導入後の感想お聞かせください

 研究には我々が開発した MODYLAS や GROMACS などの MD 計算パッケージを使用しております。MODYLAS は、「富岳」コンピュータをはじめとしたスーパーコンピュータを用いた大規模系の計算に適しています。一方で、小規模から中規模系では、研究室ワークステーション+ GROMACS をよく使用します。これまでは Intel Xeon プロセッサ E5-1620v4 @3.50GHz 28コアを使用しておりましたが、今回コア数が合計 96コアに増えた結果、4倍以上に非常に高速で解析ができるようになりました。同じコア数を使用するにも、ノード間通信がない分実際のコア数増加より速く感じました。
 MD 計算は本計算前の系の準備(モデリング)が重要になってきます。この作業は試行錯誤的要素が多いため、アクセスよく速く結果が得られることが重要となります。本計算でも初期の頃は系が不安定であることが多いため、やはり速く結果が得られることが重要です。占有できる高速のマシンがあることで、予備計算から本計算まで非常に作業が捗り重宝しております。また、AMD プロセッサの使用は初めてでしたのでコンパイルの面など導入前は不安も持っておりましたが、実際は従来の計算機と同じようにすぐにソフトウェアの導入が可能でした。

 

最後に

 藤本先生 ご多忙な中、貴重なお時間を頂きありがとうございました。
 これからも研究活動に少しでもお役にたてる様、弊社も微力ながらお手伝いをさせていただきます。

 

 

 

 

 

弊社では、科学技術計算や解析などの各種アプリケーションについて動作検証を行い、
すべてのセットアップをおこなっております。

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