2017/06/02
大容量メモリ搭載ラックマウントサーバとストレージを導入頂きました。
東京理科大学 藤井・立川研究室 立川智章講師にお話を伺いました。
研究室の特徴は一言で表すと「計算科学」。「計算科学」とは「第3の科学」とも呼ばれ、理論、実験に並ぶ解析手段の一つであり、特に工学系の学理や応用を対象にしたものは「計算工学」や「計算力学」と呼ばれています。研究テーマは (1) 大規模流体解析、(2) 多目的設計探査、(3) 社会問題への挑戦と産学連携、の3つを柱とし、社会に貢献する情報・計算工学技術に関する研究開発を行っています。
▶ (1) 大規模流体解析
先端的なシミュレーション手法とスーパーコンピュータ等も利用した大規模流体解析を行っています。産業界における流体力学課題の解決(長期的視点でのプロダクトイノベーション)を目指しています。プラズマアクチュエータとよばれるマイクロ流体デバイスを用いた大規模な流れ制御の研究では、基礎から実用研究まで幅広く貢献しており、企業との共同研究も活発です。また、マイクロデバイスの活用も視野に入れた、航空機の高度運航制御モデルの構築にも取り組んでいます。
プラズマアクチュエータを用いた流体制御の計算例
▶ (2) 多目的設計探査
現実の設計問題で直面する多目的最適化問題を解決する最適化技術、さらにそこから設計に有用な情報を抽出する探査技術(データマイニング)の研究を行っています。ますます短いサイクルでの成果が求められる設計開発において、意思決定者への効率的な設計候補の提示、複数の評価に基づく意思決定を支援する次世代探査技術の開発(長期的視点でのプロセスイノベーション)が目標です。平成28年からはポスト「京」重点課題8「近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発」で、短時間で設計候補が得られる次世代多目的最適化技術の研究開発を進めています。また、企業との共同研究では、得られた設計候補の可視化技術の研究開発を進めています。
設計候補の可視化例
▶ (3) 社会問題への挑戦と産学連携
航空機、列車など安全性と効率性を両立する運行システムを策定するモデルとシミュレーション手法の開発、それを利用して社会の構成要素が互いに影響し合う効果を分析・予測する技術の研究を行っています。計画に基づいて運行(運航)される大規模輸送システムは近年急速に複雑化し、これら社会を支える輸送システムにおける遅延は近年日常的になっており社会問題となっています。これまでにないスーパーコンピュータの社会経済の基盤課題への適用により、急速に複雑化する大量輸送システムの効率化に資することを目指しています。
羽田空港へ向かう航空機の軌跡(“国土交通省CARATS Open Data”を利用)
今回は,上記研究テーマのうち(1)大規模流体解析に関連した計算を実施するために購入しました。スーパーコンピュータを用いた大規模計算の前に研究室で様々な試行錯誤が可能になります。プラズマアクチュエータを用いた翼流れ制御では,連続駆動より周期的にオンオフを切り替えるバースト駆動の方が高い制御効果を得ることで知られ,またその駆動パターンは主流条件で異なることが明らかにされています。そのため動的な流れにプラズマアクチュエータを適用するためのフィードバック制御の研究を進めています。翼面圧力の分散を用いた制御測や圧力の移動平均を用いた制御など様々なアイデアを試しています。また,将来的にGPUなどを増設することも考えており,この環境を最大限活用することで,研究が加速することを期待しています。