2015/11/04
COMSOL用 高速計算機を導入頂きました。
金沢大学 環境科学研究室 辻口拓也 先生にお話を伺いました。
本研究室では、「熱と物質の移動現象の把握と制御」という研究主題のもと、「排熱駆動形デシカント空調装置の高性能化に関する研究」や「高出力直接形燃料電池の開発」といった環境負荷低減技術の開発・高性能化に取り組んでいます。これらの技術の高性能化において、熱と物質の移動挙動を正確に把握することは必要不可欠でありますが、実験による正確な計測は困難を極めます。そのため、本研究室では数値解析によってこれらの技術における、熱・物質移動挙動の把握・解析を行い、高性能化に向けた設計指針の構築に取り組んでいます。以下に簡単な事例を示します。
▶吸着式デシカント空調プロセス内部における水蒸気吸脱着挙動の解明
吸着式デシカント空調プロセスは、吸着材による除湿による空調をメインとした空調装置です。本プロセスでは、外気の湿潤空気を吸着材が塗布されたデシカントローターに導入し、除湿をして室内へと給気します。一方で、連続的に除湿を行なうために、吸着材に吸着された水蒸気を脱着する必要があります。脱着には排熱などによって加熱された空気を用います。つまり、本空調装置の主な駆動源は「排熱」になります。そのため、一般的なエアコンに比べて電力の消費量が大きく削減できます。本ローター内部では熱と水蒸気が同時に移動しており、これらの移動挙動の把握に務めています。
▶高性能直接形燃料電池の開発
水素を燃料とする固体高分子形燃料電池とは異なり、電極にメタノールやエタノールギ酸などの液体燃料を直接供給する燃料電池として「直接形燃料電池」があります。液体燃料は水素に比べて、エネルギー密度が高く、小型軽量で長持ちが期待できる燃料電池です。本研究室では、特にギ酸を燃料にした直接形燃料電池の開発に取り組んでいます。
燃料電池の電極は、触媒などのナノ粒子で形成される多孔質層で構成されています。この内部で、燃料となるギ酸と生成物であるCO2が生成します。このCO2の排出をスムーズにし、燃料を効率よく触媒に運ぶ必要があります。また一方で、燃料が未反応のまま解質膜を透過して空気極に到達するクロスオーバーという現象があります。燃料効率・出力の向上に向けてクロスオーバーの抑制は必要不可欠です。本研究室では、電極内部におけるギ酸とCO2の移動現象を数値解析によって明らかにし、高出力化に向けた電極設計指針の構築に取り組んでいます。また、将来的にシステムを構築する際に、セルを積層しスタックを形成する必要がありますが、スタックの設計において熱のマネージメントは不可欠になってきます。そこで、数値解析を用いたシステム全体の熱設計にも取り組んでいます。
汎用物理シミュレーション用ソフト COMSOL Multiphysics 用に導入しました。
CPUは Intel Xeon E5-2600v3 ファミリー 8コアシリーズの中で一番クロック周波数の高い(3.20GHz)を選択し、メモリは 512GB と現時点で可能な限り搭載しました。また、大規模なデータを扱えるようにグラフィクスボードも 8GBメモリを持つ プロフェッショナル用の NVIDIA社製 Quadro シリーズを選択しました。
この計算機はトータルバランスに優れ、最高のパフォーマンスを発揮する事ができます。
COMSOL に関してHPCテックさんは計測エンジニアリング社とベンチマークを取るなど情報を密にされており、オーバースペックにならないようベストな計算機を導入する事ができました。
今後、燃料電池の開発などに、更なる研究を進めて行きたいと思います。