2015/02/17
最新のNVIDIA Tesla K80を搭載したGPGPU高速計算機を導入頂きました。
京都大学工学部情報学科 Marco Cuturi 先生にお話しを伺いました。
現在、数学の世界で最適輸送理論(Optimal Transport Theory)が大変注目されています。Cedric Villani氏はその功績により、2010年数学界におけるノーベル賞と称されるFieldsメダルを受賞しました。[a]
最適輸送理論には先進の理論的示唆を提供する側面と、確固たる実用の側面を両方兼ね備えられています。例えば、最適輸送は単語データや視覚的特徴データの特徴ヒストグラムの比較などに適しており、それは特にテキスト抽出やコンピュータビジョン(コンピュータ視覚)の機械学習に重要な役割を果たします。しかしながら最適輸送を実際のデータ解析に適用するためには、非常に膨大な計算をしなければなりません。それらの多くはリニアプログラミングとネットワークシンプレックス法を用いており、効率的に並列化することは困難です。
近年、私たちの研究室では最適輸送問題に対して適当な正則化法を適用することにより、非常に重いシーケンシャル計算を行列積で置換することができることを示しました。[b] それによりGPGPUの巨大なメリットを享受することができることになったのです。GPGPUを用いると、CPUにおいて数分かかるネットワークシンプレックス法計算がものの数ミリ秒、数百万倍の速度で実行できることがあります。
私たちは、現在これらのアイディアを、グラフィクス、コンピュータビジョン、神経科学データ視覚化やテキスト視覚化における話題モデリングなどに応用しています。これらアプリケーションの多くはGPGPUのおかげで実際的な計算ができます。そのため私たちはここに科研費[c]を投入し、これらの新研究分野を探求し、最適輸送理論の高速化を追求することにしたのです。
[a] Cedric Villani, “Optimal Transport, old and new”, Springer 2009.
[b] Marco Cuturi, “Sinkhorn Distances: Lightspeed Computation of Optimal Transport”,
Neural Information Processing Systems, 2013.
[c] 若手研究A https://kaken.nii.ac.jp/d/p/26700002/2014/1/ja.en.html
研究室ホームページリンク
http://www.iip.ist.i.kyoto-u.ac.jp/index.html
今回導入した計算機には NVIDIA TESLA K80 を2基搭載しており、数百万倍の速度でネットワークシンプレックス法計算などが計算できることを確認致しました。この新しいアクセラレータを選択し導入したことは非常に良かったと思います。
この計算サーバにはあと6基の TESLA K80 が搭載できます。今後さらに複数台のGPGPUを導入して、より複雑な計算をさせてみたいと思います。