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導入事例

2016/06/13

[導入事例] 東京大学 今田研究室 様

PCクラスタ11ノードとクラスタ管理ソフト Bright Cluster Manager を導入頂きました。

研究内容

 東京大学 今田研究室 山地先生にお話を伺いました。

 

研究室・研究内容の紹介 

 今田研究室では、物性物理学を理論的に研究しています。量子多体系のための理論手法を用いて、互いの相互作用効果の大きな「強相関量子系」に見られる未知の量子相、量子相転移、相競合を解明し、現実の物質、未知の物質に広がる新しい物理学を追究することを重要な研究テーマとしています。

 

研究テーマの例 

 1.フラストレーションが生み出す、量子スピン液体や、未知の量子液体

 2.量子モット転移
 3.強相関電子系の超伝導、例えば銅酸化物および鉄系超伝導の発現機構解明
 4.量子多体系のシミュレーション手法
 5.量子多体系の示す非平衡現象
 6.トポロジカル絶縁体を含むトポロジカル相の特異な性質
 7.高効率な太陽電池の原理
 8.電子格子相互作用と強い電子相関の絡み合いの物理
 9.時間依存光電子分光など新しい実験手法の理論解析手法

 

新しい手法の開発 

  研究室では量子力学のもとでの多体現象の解明のための理論手法を開発し、進展させることにも興味を持ち、力を注いでいます。困難を克服できる新しい理論手法を開発し、応用することを通じてはじめて、未知の多体現象の解明や新物質相の予測が進む場合は多くあり、方法論の開発から応用までを研究テーマとしています。従来の手法を駆使することに加えて、解析的および数値的な手法を最近新たに開発して、強相関効果の解明のために実用化しました。とくに近年では第一原理電子状態計算との接続による第一原理的な電子系の計算手法MACEを開発・応用しています。

 

階層的第一原理強相関電子状態計算手法

(Multi-scale Ab initio scheme for Correlated Electrons (MACE)を用いた電子相関効果の大きな

 現実物質の物性予測と物質設計)

 http://www.solis.t.u-tokyo.ac.jp/research/index2.html?url=spin-orbital-GScolor.html

  多様な物質の示す物性を第一原理から理解するためのシミュレーション手法開発の需要は大きいです。このためには、物質中の電子の示す挙動をミクロなレベルから解明するための信頼性の高い計算が不可欠です。しかしながら、標準的な第一原理的電子状態シミュレーション手法では、大きな効果のある電子間のクーロン相互作用の効果が、局所密度近似などの何らかの一体近似によってしか取り入れられないという困難があります。電子間相互作用の大きな強相関量子系の物性解明を進めるために私たちは、第一原理計算ダウンフォールディング低エネルギーソルバ という3段階スキームのもとに研究を進めています。

 

イリジウム酸化物のトポロジカルな磁壁金属状態

 半導体エレクトロニクスは、界面に現れる金属的な2次元電子系を基礎として発展してきました。本研究では、一度作ってしまえば動かすことができない半導体界面とは異なり、外場によって駆動できる金属的な2次元電子系がイリジウム酸化物磁性体の磁壁に生じることを理論的に予言しました[1]。 この磁壁金属状態はその後、実験で観測されています[2]。

 イリジウム酸化物R2Ir2O7(R : 希土類元素)ような、スピン軌道相互作用が強い5d軌道に5つの電子があるイオンがパイロクロア格子では、all-in/all-out相(AIAO相)と呼ばれる非共面な磁気モーメント配置が広く安定化されることがわかってきています。またこのAIAO相内では、質量0の相対論的フェルミ粒子が従うワイル方程式に従う低エネルギー電子励起構造、ワイル電子が生じることが2011年にWanらによって予想され、ワイル電子が示す異常ホール効果や、固体表面に現れるフェルミ・アークなどのトポロジカルな性質が大きな注目を集めています。しかし、ワイル電子は磁気モーメントの発達によって対消滅をおこし、基底状態での観測は困難をともないます。本研究では、ワイル電子が対消滅した後であっても、その痕跡として磁性体R2Ir2O7 (R: 希土類元素)の磁壁においてトポロジカルな金属状態が形成されることを理論的に見いだしました[1]。
  [1] Y. Yamaji and M. Imada, Phys. Rev. X 4, 021035 (2014).
  [2] E. Y. Ma, et al., Science 350, 538 (2015).

 

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オープンソース・アプリケーション『HΦ』

 実験データと理論模型の解析結果との直接比較は、物質科学の研究プロセスの一つの核となっています。 例えば、低エネルギー励起構造を反映する比熱の温度依存性や、帯磁率から見積もった有効スピン・モーメントおよびキュリー-ワイス温度等の実験データからその背後にある電子状態を理解するためには、 理論模型の解析結果との比較が必要不可欠です。 理論模型の解析手法としては、クリロフ部分空間法による数値厳密対角化法が近似を用いず定量的な計算ができる最も信頼できる手法です。計算機の進歩によって、物性研スーパーコンピュータを用いれば、銅酸化物高温超伝導体を始めとする強相関電子系の有効模型として研究されてきたハバード模型18格子点、 スピン1/2の格子スピン模型36格子点程度の計算が容易に行うことが可能になっています。 また、ごく近年の量子統計力学の発展により、基底状態計算と同程度のコストでの有限温度計算が可能となり、比熱や帯磁率の実験との定量的比較が十分可能となってきています。
 このような背景のもと、プロジェクト代表・開発者として、オープンソース・アプリケーション『HΦ』の開発を行ってきました。『HΦ』は物性物理学に現れる広汎な量子格子模型を記述する簡便かつ柔軟な入力形式を備え、実験研究者を含む幅広い研究者のニーズと未知の系への適用に耐えるよう設計されています。また、OpenMPとMPIによるハブリッド並列アルゴリズムの実装により、物性物理学コミュニティーで広く用いられている東京大学物性研究所スーパーコンピュータにおいて、波動関数1つが1TB系の4桁の温度領域にわたる有限温度計算が一日で実行できます。

 

 

 

東京大学 今田研究室 ホームページリンク
http://www.solis.t.u-tokyo.ac.jp

 

導入システム

 

導入システムの目的や感想を教えてください

 理論物理学・計算科学的知見に加えて実験データをデータ科学によって統合し、電子間に働くクーロン相互作用の効果を精密に推定する事で物質設定を行う革新的手法の創出を目指しています。そのため大規模並列計算による電子間クーロン相互作用を精密に扱う数値計算手法の開発と応用に利用すべくクラスタ(合計264コア)を導入しました。また、クラスタ管理を容易にする為、Bright Cluster Manager も導入し、MPIおよびOpenMPを用いたハイブリッド並列設定やバッチキューシステム、リモート環境でのシャットダウン設定などをHPCテックさんにお願いしました。

以前、Bright Cluster Manager を使用した事がありましたが、導入時の講習でさらに理解が深まりました。今後のクラスタ管理に掛る時間が少なくなり、研究に専念出来ると思いますのでこれからがとても楽しみです。

最後に

山地先生 ご多忙な中、貴重なお時間を頂きありがとうございました。
これからも研究活動に少しでもお役にたてる様、弊社も微力ながらお手伝いをさせていただきます。

 

 

 

 

弊社では、科学技術計算や解析などの各種アプリケーションについて動作検証を行い、
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