高度計算機はHPCテックにお任せください。

03-5643-2681
お問い合わせ
English

導入事例

2018/03/19

[導入事例] 北海道大学 河川流域工学研究室様

大容量ストレージサーバを導入頂きました。

研究内容

 北海道大学 河川流域工学研究室 星野剛様にお話しを伺いました。

 

河川流域工学研究室のご紹介 

 河川流域工学研究室様は水文気象学や地球流体力学などに関連する研究をされており、スパコンから排出される膨大なデータを処理する為に ハードディスク 10TB x 108 本で構成される大規模ストレージシステムを導入されました。今回は山田朋人准教授が主にされている研究内容をご紹介させていただきます。

 

 

山田朋人准教授がされている研究のご紹介 

 洪水リスクの将来変化

 北海道では近年、線状降水帯や台風による豪雨が頻発しています。2014年9月には線状降水帯による豪雨に対し、北海道で初めて大雨特別警報が発表されました。また、2016年8月には4つの台風が北海道に相次いで接近・上陸し、全道各地に記録的な大雨をもたらし、氾濫や橋脚の流出などの被害が広域的に発生しました。このような極端降雨の頻発の一方で、気候変動による大雨の危険性の増大が複数の予測結果から示されています。私達の研究では大量の気象予測データを領域気候モデルを用いての高解像度化(力学的ダウンスケーリング)(図1)を実施し、将来の大雨の強度や頻度の流域単位での評価を行っています。これにより、地形の起伏をより忠実に反映したシミュレーションが可能となり(図2)、1時間あたりの強い雨の出現頻度や計画規模の大雨の出現頻度が実績値に近づくことを確認しています(図3,4)。また、温暖化が進行した後の大雨の強度や頻度を膨大な計算事例に基づき算定することができます(図5)。さらに、力学的ダウンスケーリングにより得られた膨大な大雨時の降雨の時空間分布情報を用いて将来の洪水リスクがどのように変化するかの予測を試みています。本研究での成果は国土交通省北海道開発局および北海道が設置した「北海道地方における気候変動予測(水分野)技術検討委員会」(https://www.hkd.mlit.go.jp/ky/kn/kawa_kei/splaat000000vdyw.html)において検討されており、今後の治水計画を具体的に考える上で非常に重要な知見となると考えています。

 

 

※出典:文部科学省ほか,d4PDF利用の手引き,2015.12

http://www.miroc-gcm.jp/~pub/d4PDF/design.html

図1:力学的ダウンスケーリングのイメージ

 

 

図2:力学的ダウンスケーリングの結果一例

 

 

図3:1時間降水強度の実績値との比較

 

 

図4:年最大流域平均降水量の実績値との比較

 

 

図5:温暖時における年最大降水量の増加

 

 

 Along with Water

2012年10月に行われた、北海道大学サステナビリティーウィークオープニングイベント
24時間国際サステナ対話」の収録映像。   

 

 

 地球水循環と大気陸面相互作用

 水は大気、海洋、陸域を河川、降雨、蒸発散というプロセスを経て日々旅をしており、このような地球規模の水の動きを地球水循環と言います。地球上には約14億km3の水が存在すると言われていますが、そのうち人類が実際に使用できる淡水はわずか0.8%しか存在せず、限られた水資源を約60億人の全人類で分けあって生活しています。将来の人口増加を鑑みると水資源の効率的な利用ならびに予測精度の向上が不可欠なだけではなく、洪水や干ばつ等の水に関わる災害を軽減する上でも重要です。既存の研究では、大気や海面水温の観測精度の充実化が水文気象予測の精度を向上する上で欠かすことのできない要素であると考えられてきました。しかし、我々人類が生活を行う陸域も見逃すことが出来ません。陸域の湿潤状態を表す土壌水分は海水と比較してわずかな量にもかかわらず、気候システムに対して無視しえない影響を有することが私たちの研究によって判明しつつあります。

 

図6:地球観測衛星群(NASA)
http://www.nasa.gov/

 

 

図7:全球気候モデルの概要(NOAA)
http://www.noaa.gov/

 

 

図8:土壌水分の初期情報がもたらす気温の予報スキル

 

 上記の知見は、多岐に渡る複数の人工衛星によって得られる地球環境の観測データと気候モデルを組み合わせ、スーパーコンピュータ上で疑似地球として再現および予測することによって得られます(図7)。例として、土壌水分の初期情報が気温の予報スキルに与える効果について、北米大陸に大干ばつをもたらした1988年夏の予報結果を紹介します(予報開始から16~30日後)。一般に天気予報の精度は7~10日程度を過ぎると大きく低下すると言われていますが、土壌水分情報の高度利用によって、干ばつの予報精度が大きく向上することが分かります(図8 a,d)。この結果は困難であるとされている極端現象の事前把握に土壌水分が一定の役割を有することを意味し、同時に土地利用の変化といった人間活動は気候システムに大きな影響を及ぼす可能性を示唆するものです。上記の地球規模における研究活動はNASAをはじめとする世界の研究機関と共同で日々取り組んでいます。また、水文気象観測装置を複数地点で展開し、得られる結果から現象の物理的理解を進めるとともに数値モデルの開発を行っており、今後、このような観測網の拡大および数値モデルの精緻化が、地球水循環過程のメカニズム解明、安定的な水資源量の確保や災害の低減につながると考えています。

 

 

 豪雨の早期予測に向けた人工衛星による雲情報の抽出

 人工衛星MTSATによる輝度温度情報を用いて宇宙から見た雲を分類する手法を作成しました。これによって時間解像度1km、空間解像度約5kmで雲頂温度や雲の種類を分類することが可能になります。図9はSuseno and Yamada (2012 Remote Sensing Letters)による雲分類手法のダイアグラムを、図10は同手法を用いて雲分類を行った一例のアニメーションを示します。本研究と気象モデルや他の人工衛星による観測情報を組み合わせることで、豪雨をもたらす積乱雲の早期発見や降雨強度の推定精度向上を目指しています。また、雲という情報を通して大気陸面相互作用に関する研究を進めています。

 

 

図9:雲分類のダイアグラム
(Suseno and Yamada 2012)

 

 

図10:雲の種類ごとに見る雲の時間発展の様子
(準備中)

 

 

 北海道における豪雨特性

 細く尖った形状を有する線状降水帯は、本州では2004年7月新潟・福島豪雨や同年同月の福井豪雨をはじめ度々発生し、甚大な豪雨・洪水災害をもたらしてきました。一方、北海道では本州と比較すると線状降水帯による豪雨事例は殆ど報告されていませんでした。しかし、2010年8月23日夜半から24日早朝にかけて北海道日本海側から中央部において細長く線状の降水帯によって石狩川支流の忠別川及び美瑛川周辺においては土砂災害と浸水被害が発生しました。札幌管区気象台では時間雨量42mmと53年ぶりの記録的豪雨となりした。河川流域工学研究室では北海道における線状降水帯の経年変化や地域特性に関する研究を行っています。図11は1990~2010年に北海道および周辺海域で発生した線状降水帯の発生数を示すものです(Yamada et al. 2012, Atmospheric Science Letters)。これによると北海道における線状降水帯は主に7、8月に発生しており、2010年は他の年と比較して極めて多い発生数であったことがわかります。また線状降水帯の多くは日本海側で集中しており(図11)、それらの90%以上が東か北東方向に発達していたことから、線状降水帯は北海道の日本海沿岸の流域に甚大な影響を及ぼし得ることが示唆されます。

 

 

図11:北海道および周辺海域で発生した線状降水帯の発生数

 

 

図12:線状降水帯の発生地点

 

 

 水文気象観測

 北海道内の石狩・勇払地域における複数地点(図13、14)において水文気象観測を実施しています。これは同地域における海陸風の日変化や降雨・降雪形態の特徴、水文モデル、陸面過程モデルの改善を目的としたものです。図15の写真は2012年夏に札幌国際スキー場内に設置した観測サイトです。この水文気象観測は文部科学省気候変動適応研究推進プログラム(RECCA)の「北海道を対象とする総合的ダウンスケーリング手法の開発と適用」の一環で行っています。

 

 クリックすると拡大します。     

図13:水文気象観測サイトの位置

 (■:石狩・勇払観測サイト、★:トマム観測サイト、●:アメダス観測網)

 

 

図14:観測サイトの様子

 

 

 クリックすると拡大します。     

図15:札幌国際スキー場内の観測サイト

 

この観測サイトからは毎日データが研究室のサーバに送られてきています。

 

 

 山田先生が参加しているプロジェクト

 ・Research Program on Climate Change Adaptation
  文部科学省気候変動適応研究推進プログラム
  https://www.restec.or.jp/recca/

 

 ・Global Land-Atmosphere Coupling Experiment
  全球スケールの準季節予報実験プロジェクト
  http://gmao.gsfc.nasa.gov/research/GLACE-2/

 

 ・West African Monsoon Modeling and Evaluation (WAMME)
  西アフリカモンスーンに関する国際プロジェクト
  http://wamme.geog.ucla.edu/

 

 

 

 

北海道大学 河川流域工学研究室 山田朋人准教授ホームページ

 http://earth-fe.eng.hokudai.ac.jp/research.html#yamada

 

 

導入システム

 

 

 

 

 

導入後の感想を教えてください

 地球シミュレータを使用し領域気候モデルによる膨大な気象シミュレーションを行っていますが、計算結果が非常に膨大となるため、そのデータ管理と処理用にHPCテック社製の大規模ストレージシステムを導入いたしました。今後の増設も考え24Uサイズのサーバラックも一緒にご提案いただき、サーバ搭載作業やケーブリング作業、ネットワーク設定などすぐに使えるよう一括して作業を行ってもらいました。本格的運用はこれからになりますが想定していた通りの運用ができるよう期待しています。

最後に

 星野様、ご多忙な中 貴重なお時間を頂きありがとうございました。
 これからも少しでもお役にたてる様、お手伝いをさせて頂きます。

 

 

 

 

 

弊社では、科学技術計算や解析などの各種アプリケーションについて動作検証を行い、
すべてのセットアップをおこなっております。

お客様が必要とされる環境にあわせた最適なシステム構成をご提案いたします。

各種カスタマイズ・詳細なお見積はこちらからお問い合わせください。